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キンシコウ

キンシコウ
©2006 pelican: clipped from the original
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キンシコウの基本情報

英名:Golden Snub-nosed Monkey
学名:Rhinopithecus Roxellana
分類:オナガザル科 シシバナザル属
生息地:中国
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉

キンシコウ
photo credit: su neko

孫悟空のモデル?

真っ白い顔に獅子舞の獅子頭のような特徴的な鼻(シシバナザルという名前の由来)、そして白い雪に映える金色の体毛(中国名は金絲猴)。

中国中西部の標高2,000m以上もの所に生息するキンシコウは、人以外で最も過酷な寒さを耐え忍ぶサルだと言われています。

そのため、このサルの毛は10㎝にもなり、平均気温マイナス5度の寒い冬の環境に適応しています。

まあヒトは実質服着たり火を使ったりとめちゃくちゃ姑息なので、裸で氷点下にさらされたら、霊長類の中でも最弱でしょう。

ちなみに北海道札幌の1月の平均気温が約マイナス5度なので、キンシコウたちと同じ寒さを味わいたい方は、是非1月を札幌で過ごしてみてください。裸で。

ところで、“キンシコウ”とネットで検索すると、キンシコウが孫悟空のモデルであるとうそぶくサイトによく出会います。

孫悟空とは、7つの玉を集める物語、『ドラゴンボール』に出てくるサイヤ人、ではなく、中国四大奇書である『西遊記』、そう、あの天竺を目指す物語に出てくるサルです。

日本でも童話になっていたりドラマ化されたりとなじみがあるのではないでしょうか。

このモデルがキンシコウということなのですが、実はこれは誤りです。

かつて愛知県犬山市にある日本モンキーセンターの館長がそれらしきコメントを残し、それが独り歩きした結果、このような言説が広まるようになりました。

このネットの時代、言葉の一人歩きは怖いものです。

では孫悟空の本当のモデルはどんなサルか。

アカゲザルというサルが本当のモデルだと言われています。

宇宙にも行ったことのあるアカゲザル、彼らの記事も是非読んでみてください。

キンシコウがモデルでよくない!?というご意見は受け付けません。

アカゲザルこそが孫悟空なのです。

とはいえ、雪山に佇むキンシコウの姿を見ると、彼らが何かの物語の題材に選ばれていたとしていもおかしくはありません。

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キンシコウ
Photo credit: Giovanni Mari

キンシコウの生態

生息地

キンシコウは中国中西部(甘粛省、湖北省、陝西省、四川省)という限られた場所に位置する、標高2,000m~3,000mの針葉樹林や落葉樹林などに生息しています。

彼らは1年の約半分が雪に覆われることもある地域に生息しており、人間以外の霊長類では最も寒い所に生息する霊長類として知られています。

食性

雪深い生息地は食べ物がなかなかないので彼らの行動範囲は比較的広くなります。

普段は果実種子若葉を食べますが、冬になると地衣類樹皮を食べます。

この他、昆虫や鳥、その卵を食べることもあります。

キンシコウをえさとする捕食者には、ドールヒョウアジアゴールデンキャットオオカミ猛禽類などがいます。

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形態

体長はオスが58~68㎝、メスが47~52㎝、体重はオスが約16㎏、メスが約9.5㎏、しっぽの長さは51~72㎝で、性的二型が見られます。

社会

キンシコウは重層構造の社会を持つことで知られています。

1頭のオスと複数のメスにより構成されるユニット(ワンメイル・ユニット)が複数集まり、合計600頭近くになることもあるようです。

この群れは冬には20~30頭ほどから成る小さな集団に分かれ、暖かくなった春にまた集まります。

ちなみに、このような社会を作るサルは非常にまれで、他にゲラダヒヒマントヒヒが挙げられます。

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行動

昼行性のキンシコウは基本樹上で暮らしますが、冬になるとえさを求めて地上にいる時間が長くなります。

また、季節による垂直移動が見られ、冬になると標高が低い所(1,400~2,800m)に、夏になると3,000m以上もの高地まで移動します。

コミュニケーションに関しては、特に音声によるものが顕著で、その他グルーミングマウンティングプレゼンティングなども見られます。

繁殖

繁殖には季節性が見られ、交尾は8~10月にかけて行われます。

メスは約7カ月の妊娠期間の後、3月~6月にかけて1匹の赤ちゃんを産みます。

よく分かっていませんが、メスの性的休止期間は約2年、離乳は1歳、性成熟に達するのは4~6歳の時だと推測されています。

キンシコウでは子殺しが確認されています。

寿命は25~30年です。

下の動画では、キンシコウの社会にとって子どもがどのような存在かよく分かります。

人間とキンシコウ

絶滅リスク・保全

キンシコウは、生息地の縮小や狩猟などのために個体数を減らし続けています

特に山の観光地化は道路の整備や人の流入という点で、キンシコウの生態に負の影響を与えていると指摘されています。

レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、生存数は2万頭を切ると言われています。

キンシコウには3亜種が認められていますが、Rhinopithecus roxellana roxellanaは約1万頭、Rhinopithecus roxellana qinlingensisは約4,500頭、Rhinopithecus roxellana hubeiensisに至っては、約1,100頭が生き残るのみと言われています。

しかし一方で、彼らの生態を守ろうとする動きもあります。

中国では昔、体毛をコートにしたり、肉や骨を薬として食したりとキンシコウが乱獲された歴史があります。

これ以上彼らの数を減らさないため、現在はジャイアントパンダ同様、1989年に制定された野生動物保護法などの法律により保護されています。

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動物園

生息域が狭く、個体数も少ないキンシコウですが、日本では唯一、熊本県にある熊本市動植物園で見ることができます。

かつて神奈川県のよこはまズーラシアでも見ることができましたが、中国に返されました。

今、キンシコウがいたところにはテングザルが飼育されているようです。

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