キンシコウの基本情報
英名:Golden Snub-nosed Monkey
学名:Rhinopithecus Roxellana
分類:オナガザル科 シシバナザル属
生息地:中国
保全状況:EN〈絶滅危惧ⅠB類〉
孫悟空のモデル?
真っ白い顔に金色の体毛。
中国中西部の標高2000m以上もの所に生息するこのサルは、人以外で最も過酷な寒さを耐え忍ぶサルだと言われています。
そのため、このサルの毛は10センチにもなり、平均気温‐5度の寒い冬の環境に適応しています。
まあヒトは実質服着たり火を使ったりとめちゃくちゃ姑息なので、裸で氷点下にされされたら、サルの中でも最弱でしょうね。
ちなみに北海道札幌の1月の平均気温が約₋5度なので、キンシコウたちと同じ寒さを味わいたい方は、是非1月を札幌で過ごしてみてください。裸で。
“キンシコウ”とネットで検索すると、キンシコウが孫悟空のモデルであるとうそぶくサイトによく出会います。
孫悟空とは中国四大奇書である『西遊記』に出てくるサルです。
そうです、あの天竺目指すやつです。
日本でも童話になっていたりドラマ化されたりとなじみがあるのではないでしょうか。
このモデルがキンシコウということなのですが、実はこれは誤りです。
かつて愛知県犬山市にある日本モンキーセンターの館長がそれらしきコメントを残し、それが独り歩きした結果、このような言説が広まるようになりました。
このネットの時代、言葉の一人歩きは怖いものです。
では孫悟空の本当のモデルはどんなサルか。
アカゲザルというサルが本当のモデルだと言われています。
是非アカゲザルの記事も読んでみてください。

キンシコウがモデルでよくない!?というご意見は受け付けません。
アカゲザルこそが孫悟空なのです。
キンシコウの生態
キンシコウは中国中西部という限られた場所に位置する、標高2000m~3000mの針葉樹林などに生息しています。
雪深い生息地は食べ物がなかなかないので彼らの行動範囲は比較的広くなります。
普段は果実や種子、若葉を食べますが、冬になると地衣類や樹皮を食べます。
移動は基本樹上で行われます。
体長は57~76㎝、体重は15㎏前後、しっぽの長さは51~72㎝で、オスの方が大きくなります。
キンシコウは重層構造の社会を持つことで知られています。
1頭のオスと複数のメスにより構成されるユニット(ワンメイル・ユニット)が複数集まり、合計600頭近くになることもあるようです。
この群れは冬には60頭ほどから成る小さな集団に分かれ、暖かくなった春にまた集まります。
ちなみに、このような社会を作るサルは非常にまれで、他にゲラダヒヒやマントヒヒが挙げられます。


コミュニケーションに関しては、特に音声によるものが顕著で、その他グルーミングやマウンティング、プレゼンティングなども見られます。
繁殖には季節性が見られ、8~11月にかけて行われます。
メスは約7カ月の妊娠期間の後、4月~8月にかけて1匹の赤ちゃんを産みます。
よく分かっていませんが、メスの性的休止期間は約2年、離乳は1歳、性成熟に達するのは7歳の時だと推測されています。
キンシコウに会える動物園
キンシコウは、生息地の縮小や狩猟などのために個体数を減らし続けています。
特に山の観光地化は道路の整備や人の流入という点で、キンシコウの生態に負の影響を与えていると指摘されています。
レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており、生存数は約1万頭と言われています。
しかし一方で、彼らの生態を守ろうとする動きもあります。
中国では昔、体毛をコートにしたり、肉や骨を薬として食したりとキンシコウが乱獲された歴史があります。
これ以上彼らの数を減らさないため、現在はジャイアントパンダ同様、厳重に保護されています。
生息域が狭く、個体数も少ないキンシコウですが、日本では唯一、熊本県にある熊本市動植物園で見ることができます。
かつて神奈川県のよこはまズーラシアでも見ることができましたが、中国に返されました。
今、キンシコウがいたところにはテングザルが飼育されているようです。
