スンダスローロリスの基本情報
英名:Sunda Slow Loris
学名:Nycticebus coucang
分類:ロリス科 スローロリス属
生息地:インドネシア, マレーシア, タイ, シンガポール
保全状況:VU〈絶滅危惧Ⅱ類〉
毒を持つ唯一のサル
スンダスローロリスは、スローロリスのなかまです。
スローロリスと聞くと、リスという言葉が入っているので、リスのなかまかと一瞬思ってしまいますが、正式な切り方はスロー/ロリスです。
なのでリスのなかまではありません。
かといってサルのなかまかと言われたら、写真を見てもそんな風には見えませんよねえ。
でもサルなんです。
ロリスのなかまは哺乳類の原始的な特徴を持っているサルで、鼻は犬や猫のように湿っています。
嗅覚がとても発達しており、においでもコミュニケーションをしていると言われています。
左右の鼻の穴の間にある鼻鏡という部分の皮膚には、鼻とは別にフェロモンを感知するヤコブソン器官という嗅覚器官を持っています。
そして、スローロリスのなかまは毒を持つことで知られています。
脇あたりの臭腺から出る分泌物と唾液を混ぜ、更に刺激のある毒を創り出します。
これを体に塗ることで、外敵や寄生虫から身を守っているのです。
スローロリスは名前の通りゆっくりしか動くことができないため、このような手段で身を守っています。
ちなみに、スローロリスに噛まれたことで、人間がアナフィラキシーショックを起こしたことが報告されています。
かわいいと思って近づきすぎると危ないですよ。
スンダスローロリスの生態
スンダスローロリスは、タイやマレーシア、シンガポール、インドネシアのスマトラ島などの熱帯雨林に生息しています。
単独で行動するときもあれば、つがいや群れで行動することもあります。
主に果実を食べ、葉や樹液、鳥の卵も食べます。
ときどき、人家に忍び込み、鶏卵を盗んで食べてしまうこともあるそうです。
これだけ動くのが遅いと、さぞ盗みがうまいのでしょうねえ。
夜行性のこのサルは、タペータムという組織を網膜の奥に持ち、それが光を反射することで、暗い中でも行動することができます。
スンダスローロリスは他のスローロリスのなかまよりも比較的大きく、体長26‐38センチ、体重600~700グラムほどで、オスメスに外見上の違いはありません。
しっぽはほとんどなく、手の人差し指は枝をしっかりつかむために短くなっています。
また、スンダスローロリスはキツネザルのようなくし歯を持ちますが、キツネザルとは違ってグルーミングのためでなく、幹にこびりついたガムをはがしとるのにつかわれるようです。
スンダスローロリスは、基本的に単独で行動します。
しかし、行動域が被ることもあり、複数個体が同所で観察されることもあります。
個体間の関係は比較的良好で、グルーミングや音声によるコミュニケーションが行われます。
繁殖に季節性はなく、メスは1年間隔で出産します。
メスの排卵周期は29~45日で、複数のオスと交尾すると考えられています。
メスの妊娠期間は約190日で、1匹の赤ちゃんが生まれます。
赤ちゃんは母親によって育てられ、3~6カ月で離乳します。
性的成熟には18~24カ月で達し、寿命は飼育下で20~27年です。
スンダスローロリスに会える動物園
スンダスローロリスは個体数を減らし続けており、レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
最近ではペットとして人気が高くなる一方で、密漁や違法取引が横行しているようです。
個人的にはペットとして飼うより、動物園で見ることをオススメします。
というのも、スローロリスはセンシティブな生き物であり、ストレスに強くありません。
また、噛まれるとひどい傷を負うことになります。
そのため、彼らの多くは歯を抜かれます。
しかし歯は生きる上で重要ですし、感染症にもかかりやすくなります。
なので、スローロリスのためにもぜひ動物園で見てみてください。
そんなスンダスローロリスには、北海道の円山動物園で会えます。
ちなみに、より大きなくくりでスローロリスに会える動物園は、このほかにも神戸市の王子動物園や、愛知県の日本モンキーセンタなどがあります。
これらの動物園で、スローロリスたちのゆっくりした動きにぜひ癒されてください。